蒲焼きと檸檬と娘のサロン

「頑張らないうつヌケ」をモットーに。だる~く、ゆる~く、時にはタイトにチートに。

予定調和?あくびが出てくる。

コンコン… 


「失礼します。」 


「まあ、かけたまえ。」


「・・・?面接官がお一人…。普通、三人くらいはいるんじゃ…。」


「・・・キミはね、特別枠だからね。他の採用候補者とは一線を画す存在だ。

 

つまり、キミはすでに選ばれている。


しかしね、形ばかりの面接だけでもしておかなければならないのでね。


それならば何人も面接官を用事する必要もあるまい?」      


「なぜ、私が特別枠などと?」


「キミは"新世紀エヴァンゲリオン"を観たことはないのかね?」


「いや?あるっちゃあありますが…。

 

  なんかアレですか?ファ―ストチルドレンだの、"エヴァに乗りなさい!"だの…。」


「いや、ぜんぜん関係ない。」


「(じゃあ、言うなよ…。)」


「キミの事前情報、個人情報は、わが社の調査部門や興信所、探偵、はたまた前世リ―ディング師やエレクトーン占い師に至るまで、総力を挙げて調べ尽くしていてね。」


「は、はあ…。」


「まあ…。なんと言うか、非の打ち所なく、欠けている所を見つけることが非常に困難であった。」


「い、いや?私は全然イケメンでもないし、モテないし、大学だってそんな頭のよろしい所じゃないですし?


何がそんなに…。」


「我が社の社長がね。」


「?」


「我が社の社長は、キミのありのままを愛している。」


「・・・。…なんか、キモいんですけど…。」


「そんなワケで、社長はキミをありのまま愛したい、と。」


「帰ります。」



「♪ロンリ―ロンリ―  寂しい夜を~  人生の荒波をぉ~  幾度も超えてきた~  


そして~  そしてえ~  出会ったのさあ~  これはディスティニ―  ボクとキミは恋に落ちた~」


「…うわあッ!?いつの間にそれを!?」


「♪♪そして~  ボクは~  キミをこう呼ぶよ~


ラブリーロンリィロリ―タあ~ココォ~


キミのバブみに溺れたい~


ノ―○ナニ―ノ―ラ―イフ

ノ―オ○二―ノ―ラ―イフ

ノ―オナ○―ノ―ラ―イフ


フォーユ―

 

…。

 

"ココ"って誰なのかね?」


「別にいいだろ!そんなこと!!」


「そして、キミはロリコンなのかい?


サル・エ―ジェンシ―社の卓見氏によれば、真性のロリコンらしいけれども。


キミの採用は決まっているが…犯罪だけは止めてくれたまえよ?」


「うるせえよ!」


「・・・。


ああ、分かった。なかなかいい人材がいないものだね。(ガチャ)


あ、すまんね、今、別室の面接室で一般枠の面接が進んでいてね。その報告が逐次入ってくるのだが…。」


「・・・。」


「今しがた終わった子は京都大学法学部の学生さんで…。ふむ、なんかコンピューターウィルスみたいな顔をしているね。」


「(どんなカオだよ。)」


「その前が…。う~ん、慶応義塾大学経済学部の学生さんで、体育会系で朗らか、kinki kids堂本光一くんみたいな顔で…。」


「…。めっちゃ良さそうですが…。」


「堂本くんの顔が、元K-1選手のピータ―ア―ツ氏の身体に乗っかっていた、と。」


「滅茶苦茶ハイスペックじゃないですか!!」 


「だが…。惜しむらくは社長好みではない。彼はお祈りしよう。」


「お祈り…。


じゃあ聞きますが、私はなんなんです?社長さんの好みってだけで特別枠なんじゃないでしょうね?」


「何か問題でもあるのかね?」



「フツ―にやれよフツ―によオ!!今ゆってた学生たちより、オレははるかに低スペックだろうが!!会社じゃあ、使えねえ奴はいらねえもんでしょうがフツ―!!


それとも何ですか?


オレは社長の付き人やって、夜のお供やウンコしたあとのケツのケアまでしなくちゃいけね―ってんじゃないだろうな!?」


「それの何が不満なのだね?キミは社長との交際がイヤなのかね?」


「…やっぱり…。


ワンチャン、社長さんが美少女ってことは?」


「いや、初老のナイスガイだがなにか?」


「聞かなきゃよかった…。」


「回りだしたな。運命の歯車が。」


「勝手に回すな。

 

そんな運命、断固ぶっ壊してやりますよ!!

 

ひとつ聞きたいんですが…。」


「何だね?」

 
「私の何がそんなに社長さんのツボに入っちゃってるんです?」


「…。口で表現するのが難しいな。あえて言うなら、減点主義を執るとして減点するところなく…。」


「なんかあるでしょうが!!」 


「…。キミのルックスがね。"ドルジ"っぽいと。」


「・・・。…"どるじ"?」


「元横綱朝青龍関な。」


「・・・」


「社長は大の朝青龍ファンでね。


キミとぜひ相撲をとりたいそうだ。昼も、夜もね。」


「…。うっぷ。」 


「何かね?」


「何かね?じゃねえだろボケエ!!」


「…。あ、すまんね、一般枠で逸材が来ているらしいので、ちょっとそちらに集中させてもらうよ。


ふむ。


秋の暮れゆく逢魔刻…。河川敷の公園で開催されたる花火大会。


折しも宵の明星を見上げ、故郷へ思いを馳せるも、すぐさま視線を戻し正面の仮設の男女兼用トイレの行列と言う名の現実を見据えなければならぬ己を呪う、逸ノ城関のような顔とおしりの、大阪府立大学工学部の彼、だね?

 

悪くないね。第四面接まで飛び級させたまえ。(ガチャ)


あ、失礼したね。」


「面接は、カオで選んでるんですか?」


「顔は重要なファクターだ。かの某ひろゆき氏もそう言う持論を持っているようだが…。」


「分からんでもないですが、なんかことごとく関取のような…。」


「ともあれ!!」


「は、はい。」


「キミは特別枠採用だ。これはもう決定事項だ。4月2日から尽力してくれたまえ。心から歓迎しよう。」


「拒否権は?」


「ない。(ほじほじ)」


「・・・」


「拒否したら?」


「我が社の影響力を舐めてもらっては困る。社会の裏も、表もね。」


「・・・・・・。分かりましたよ。」



「ふむ、OK牧場と言うことでいいのだね?」

 
ガッツ石松みたいすね。給料は弾んでもらいますからね!!」


「それは無論だ。」


数年後。


彼は社長との蜜月が、まんざらでもなくなっていったようである。


めでたしめでたし。/おしまい。